ハードボイルドな1日
2005年2月18日 日常一昨日のミッションの疲れも取れないうちに、
助手が新しい仕事を持って来やがった。
誘拐事件の解決...
ある、大物演歌歌手が何者かに誘拐されたらしい。
優秀な日本の警察もお手上げと言うくらいだ。
かなりの難事件なのだろう。
だが、俺にはそれくらいがちょうどいい。
ポケットに入った愛用のレゴブロックの時計を覗き込むと
時間は17時15分。この事件は時間との戦いになるだろう。
直感的にそう思った俺は手元の資料にざっと目を通し、
急ぎ愛車で依頼主の元へと向かった。
誘拐された芸能人のイニシャルはS・K。
紅白歌合戦でトリを務めるほどの大物らしい。
NHKという、国の奴隷に成り下がった放送局に興味のない俺は
そうか、と軽く流し、誘拐事件のステージへと向かった。
「こ、ここは...」
見覚えのある場所...
そう、それは、一昨日のミッションを行った場所の近くだったのだ。
一昨日感じた違和感...
宝玉を25個も破壊されて、なお警戒態勢を取らなかったのは、
この誘拐事件が計画的に同時進行していたからに違いない。
大時の前の小事、宝玉などにはかまっていられなかったのだろう。
俺もなめられたものだ。
一昨日のミッションの成功が、造られたものと感じ、
俺は怒りを露わにした。だが、怒りはこの仕事には禁物だ。
常に冷静に行動しなくてはならない。
運命の女神はクールな男が好みなのだ。
ツイていないときは、何をやってもうまくいかず、
調子がいいときは周りが見えなくなりがちだ。
生と死。隣り合わせの運。大事にしなくてはいけない。
冷静さを取り戻した俺は相棒に手をかけ、物陰から様子を見る。
昨日とはうって変わって仰々しい警備だ。
入り口のSPからもまるっきり隙が感じられない。
「ここは正面突破が吉か」
俺は正面から相棒と共に飛び込んでいく。
派手な正面突破を挑みながらもクールさは忘れていない。
相棒が火を吹くたびに、目の前に道が開いてゆく。
その騒ぎを聞きつけたのか、黒服が次々と現れ辺りが騒がしくなった。
これでは、あの部屋に誘拐されたS・Kがいることを教えている
ようなものだ。高確率で間違いはないだろう。
俺は通路にもどり、隙を見て懐のC4爆弾をセットする。
だが不発だったようだ。一時ざわめいていた館内も静かに戻る。
しかし、俺はその隙を見逃さない。
俺は相棒と共に静かになりかけた館内の照明を次々と打ち抜いた。
1個消灯、2個消灯、そしてまた2個消灯...
そして、相棒が照明を3個消灯させたとき、
再び館内にざわめきが起こった。
30秒ほどたっただろうか。
暗がりの中、俺は再度C4爆弾をセットした。
今度は狙いは外さない。爆発と共にSPが倒れ扉が開く。
警告音と共に館のスプリンクラーが作動して、
爆風を洗い流した。
『北島大津波!!』
俺はその煙とニセモノの雨に隠れ、部屋へと飛び込む。
ざっと辺りを見回すと、部屋の隅に日本風の服を着た男がいた。
ターゲットに違いない。俺は男の手を引き館から脱出を計る。
『右から!』
手をつかんだその刹那、男が叫んだ。
さすが大物だ。誘拐されながらも脱出時のルートを考えていたようだ。
俺の考えとも一致する。俺達は素早く部屋を飛び出し外へと向かった。
『左からだよ!』
S・KはSPの行動にも目を光らせていたのだろうか?
俺はとっさに体を逃がし、左からの攻撃に備える。
大物演歌歌手とは聞いていたが、その風貌、物腰から見ても
やはり只者ではない。
360メーターほど走っただろうか。
ようやく外への出口が見えてきた。
だが、そこには爆音に警戒したSPが出口の前に陣取っていた。
脱出口のみ押さえるとは、さすがはプロだ。
一昨日の筋肉バカとは一味違う。
井戸も最初は濁り水。
ここは、我慢が必要かもしれないと察した俺達は、
一旦物陰に身を隠し体制を整える。大きく息を吸うと右肩に痛みを感じた。
さっきの爆風で怪我をしていたようだ。このまま攻撃を仕掛けていたら
どうなっていたか分からない所だ。
俺は止血剤の「オロナミンC」を体内に注入し、SP達の目の前に
S・Kと共に飛び出した。これだけの近距離では銃はもはや無力に等しい。
俺は小型の斧を懐から取り出し、回転しながらSPに斬りかかる。
『待った!!』
突然、S・Kが叫ぶ。とっさの所で脇からの銃弾をかわす俺。
危ない所だった。少し離れた所から別のSPが俺を狙っていたようだ。
素早く銃弾をかわした俺はS・Kに目で礼を言い、再度SPに斬りかかった。
『真・与作大回転斬り!!』
時が止まったかのような静けさが館内に訪れた。
辺りを見回すが、立ち上がるSPはいなかった。
『男だねえ。いいねえ。』
S・Kがビッグに祝福してくれる。
大げさだな。と、言いながらもまんざらではない俺は、
照れながら外へと飛び出した。
外は雨。
俺達の足跡を洗い流してくれる。ツイているようだ。
途中4回の雷が鳴り響いた。
『サブロウチャンス!』
館内に響くアラートが雷鳴にかき消される。
俺たちは疲れた体を車に投げ捨てその場所を離れた。
ここまでくればミッションは成功だ。
俺はターゲットと別れ、疲れた体を休ませるべく家路についた。
・
・
家に帰り、ハムのケチャップ炒めを食べながらTVの電源を入れる。
やはり、ハムはケチャップに限る。ソースでは物足りない。
TVのチャンネルを回すが、今回の誘拐事件のニュースは
どこにも流れてはいない。
ただ、俺と懐に残った2万ドルの報酬だけが真実を知っていた。
−アルのハードボイルドな1日・完−
助手が新しい仕事を持って来やがった。
誘拐事件の解決...
ある、大物演歌歌手が何者かに誘拐されたらしい。
優秀な日本の警察もお手上げと言うくらいだ。
かなりの難事件なのだろう。
だが、俺にはそれくらいがちょうどいい。
ポケットに入った愛用のレゴブロックの時計を覗き込むと
時間は17時15分。この事件は時間との戦いになるだろう。
直感的にそう思った俺は手元の資料にざっと目を通し、
急ぎ愛車で依頼主の元へと向かった。
誘拐された芸能人のイニシャルはS・K。
紅白歌合戦でトリを務めるほどの大物らしい。
NHKという、国の奴隷に成り下がった放送局に興味のない俺は
そうか、と軽く流し、誘拐事件のステージへと向かった。
「こ、ここは...」
見覚えのある場所...
そう、それは、一昨日のミッションを行った場所の近くだったのだ。
一昨日感じた違和感...
宝玉を25個も破壊されて、なお警戒態勢を取らなかったのは、
この誘拐事件が計画的に同時進行していたからに違いない。
大時の前の小事、宝玉などにはかまっていられなかったのだろう。
俺もなめられたものだ。
一昨日のミッションの成功が、造られたものと感じ、
俺は怒りを露わにした。だが、怒りはこの仕事には禁物だ。
常に冷静に行動しなくてはならない。
運命の女神はクールな男が好みなのだ。
ツイていないときは、何をやってもうまくいかず、
調子がいいときは周りが見えなくなりがちだ。
生と死。隣り合わせの運。大事にしなくてはいけない。
冷静さを取り戻した俺は相棒に手をかけ、物陰から様子を見る。
昨日とはうって変わって仰々しい警備だ。
入り口のSPからもまるっきり隙が感じられない。
「ここは正面突破が吉か」
俺は正面から相棒と共に飛び込んでいく。
派手な正面突破を挑みながらもクールさは忘れていない。
相棒が火を吹くたびに、目の前に道が開いてゆく。
その騒ぎを聞きつけたのか、黒服が次々と現れ辺りが騒がしくなった。
これでは、あの部屋に誘拐されたS・Kがいることを教えている
ようなものだ。高確率で間違いはないだろう。
俺は通路にもどり、隙を見て懐のC4爆弾をセットする。
だが不発だったようだ。一時ざわめいていた館内も静かに戻る。
しかし、俺はその隙を見逃さない。
俺は相棒と共に静かになりかけた館内の照明を次々と打ち抜いた。
1個消灯、2個消灯、そしてまた2個消灯...
そして、相棒が照明を3個消灯させたとき、
再び館内にざわめきが起こった。
30秒ほどたっただろうか。
暗がりの中、俺は再度C4爆弾をセットした。
今度は狙いは外さない。爆発と共にSPが倒れ扉が開く。
警告音と共に館のスプリンクラーが作動して、
爆風を洗い流した。
『北島大津波!!』
俺はその煙とニセモノの雨に隠れ、部屋へと飛び込む。
ざっと辺りを見回すと、部屋の隅に日本風の服を着た男がいた。
ターゲットに違いない。俺は男の手を引き館から脱出を計る。
『右から!』
手をつかんだその刹那、男が叫んだ。
さすが大物だ。誘拐されながらも脱出時のルートを考えていたようだ。
俺の考えとも一致する。俺達は素早く部屋を飛び出し外へと向かった。
『左からだよ!』
S・KはSPの行動にも目を光らせていたのだろうか?
俺はとっさに体を逃がし、左からの攻撃に備える。
大物演歌歌手とは聞いていたが、その風貌、物腰から見ても
やはり只者ではない。
360メーターほど走っただろうか。
ようやく外への出口が見えてきた。
だが、そこには爆音に警戒したSPが出口の前に陣取っていた。
脱出口のみ押さえるとは、さすがはプロだ。
一昨日の筋肉バカとは一味違う。
井戸も最初は濁り水。
ここは、我慢が必要かもしれないと察した俺達は、
一旦物陰に身を隠し体制を整える。大きく息を吸うと右肩に痛みを感じた。
さっきの爆風で怪我をしていたようだ。このまま攻撃を仕掛けていたら
どうなっていたか分からない所だ。
俺は止血剤の「オロナミンC」を体内に注入し、SP達の目の前に
S・Kと共に飛び出した。これだけの近距離では銃はもはや無力に等しい。
俺は小型の斧を懐から取り出し、回転しながらSPに斬りかかる。
『待った!!』
突然、S・Kが叫ぶ。とっさの所で脇からの銃弾をかわす俺。
危ない所だった。少し離れた所から別のSPが俺を狙っていたようだ。
素早く銃弾をかわした俺はS・Kに目で礼を言い、再度SPに斬りかかった。
『真・与作大回転斬り!!』
時が止まったかのような静けさが館内に訪れた。
辺りを見回すが、立ち上がるSPはいなかった。
『男だねえ。いいねえ。』
S・Kがビッグに祝福してくれる。
大げさだな。と、言いながらもまんざらではない俺は、
照れながら外へと飛び出した。
外は雨。
俺達の足跡を洗い流してくれる。ツイているようだ。
途中4回の雷が鳴り響いた。
『サブロウチャンス!』
館内に響くアラートが雷鳴にかき消される。
俺たちは疲れた体を車に投げ捨てその場所を離れた。
ここまでくればミッションは成功だ。
俺はターゲットと別れ、疲れた体を休ませるべく家路についた。
・
・
家に帰り、ハムのケチャップ炒めを食べながらTVの電源を入れる。
やはり、ハムはケチャップに限る。ソースでは物足りない。
TVのチャンネルを回すが、今回の誘拐事件のニュースは
どこにも流れてはいない。
ただ、俺と懐に残った2万ドルの報酬だけが真実を知っていた。
−アルのハードボイルドな1日・完−
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